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運命とか未来とか、どうでもいい・・ そう思っていたあの頃にはもう、戻れない。 ほろ苦く・・だけど甘い。

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どうして、奈々がいるの?
ここ・・ゆうのマンションだよ?

ロックの掛った自動ドアの向こう側、寄り添うように立つ2人の姿。
その姿に胸がずきん、と痛んだ。
そしてその後すぐに襲ってくる嫉妬心。

頭の中で回るのは、「どうして」 その4文字だけだった。


あたしの姿を見つけた途端、奈々は笑顔でゆうに何か言った後、彼の手をひっぱってこちらに来た。
気のせいか・・その表情が勝ち誇っているように見える。

「あ~ルリ、遅かったじゃん?」
「え?」
「メールしたのに~、先生のお見舞いしないと駄目じゃん」

・・・???
何を言ってるの?
新しいメールアドレスは奈々に教えてない。
いや、そんなことより奈々はどうしてここに?
あたしとゆうの何を知っているの?

「奈々・・、アンタ、何を知ってるの?と言うか・・何がしたいの?」

正当な質問だと思う。
だって、ゆうとあたしの関係は誰にも言ってない。
あたしがここに来る事だって誰も知らない。
それに、奈々がここに居る理由も・・・

「ひどい・・ルリ。そんな言い方しなくたって・・」
「??だから、何なの?」
「う・・あたしがぁ、先生のこと、好きだって言うのを怒るのは仕方ないけど・・でも、でも、2人のことを応援しようと思ったの。だから、もう怒らないで」

ほんっと分けわかんない。
そりゃ多少言い方は厳かったかも知れない。
でも・・・
奈々は目を真っ赤して涙を零した。
やがてそれはしゃくりあげるほど、大粒の涙に変わっていく。

「ちょ、ちょっと・・奈々?」

俯く奈々の肩に手を触れようとした時、その手をゆうに掴まれた。

「その変にしとけよ、皆藤」
「え?」
「もう良いだろ?許してやれよ」

許すって・・何の事?
あたしと奈々が絶交してる事?
智くんの件で喧嘩をした事?
それとも・・・?

2人が言ってることが分からない。
何がどうして、奈々が泣いているのか。
ゆうがどうしてあたしを冷たい目で見るのか。

だけど、その質問はゆうの低い声で遮られた。

「もう遅いから、2人とも帰れ。悪いけど手がこの状態だからな、運転は出来ない。川瀬、タクシーで帰るか?」

どうして・・
どうして・・??
2人の間に何があったの?

どうして、ゆうは奈々ばかりを気遣うの?
あたしだって、ゆうのことが心配でここまで来たのに。

どうして?


■□■□


奈々は酷く泣いていて、とても歩いて帰れる様子じゃなかった。
ゆうがタクシーを呼ぶからと、部屋に戻った間に、あたしはその場を離れた。

これ以上、ゆうの冷たい視線を受けるのが嫌だった。
これ以上、ゆうが奈々を気遣うところを見たくなかった。

2人に何があったのか。
知りたいけど、何だか怖くて聞けそうにないよ。

ゆうの家から自分の家までバスで30分ほどの距離。
いつものバス停で降りると、あとはあの長い坂を上るのみ。

はぁ・・・
気が滅入る。

すっかり日が落ちて真っ暗になった道を歩きだそうとしたところで、声を掛けられた。

「皆藤?」

あたしより少し高い人影。
男性にしては少し高めの声、聞き覚えのあるシューズの音。

「吉森くん・・?」
「やっぱ、皆藤じゃん・・・・・」
「?」
「・・・・皆藤、何で泣いてるの?」



  



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2010.02.28 / Top↑
――何が何でも先生を手に入れたい。
それは恋愛感情とは別に・・・


「ねぇ、先生。あたしの気持ち、分かってくれるよね?」
「川瀬・・いい加減に」
「ルリは良くてどうしてあたしは駄目なの?」

ルリより可愛くて
ルリより胸が大きくて
ルリより人気がある

このあたしが、あんな子に劣るはずないじゃない。

皆藤って、スタイル良いよなぁ~
皆藤さんって、美人で頭も良いよね~羨ましい
ルリってクールだけど、以外に可愛いとこあるよね

そんななずない。
負けない。
あたしがルリなんかに負けるはずない。

「先生はルリのこと、誤解してるよ」
「何が?」
「あの子・・・昔から男遊びが激しくて・・あの通り、美人でしょ?だから寄ってくる男も多いの。来るもの拒まずってやつだよ。だから先生もきっと・・」
「それは、俺が決めることだ」
「まさか、先生、本気?」
「本気だと言ったら?」

突き刺すような強い視線。
その力強さに揺るぎないものを感じた。

ここは・・・
引いた方が良いよね。

「そっか、分かった。あたし、応援する!」
「え?」
「だからぁ、先生とルリ。応援するから、頑張って」
「川瀬・・」
「何も言わないで。先生を諦めるのは辛いけど・・あたし、2人のことが好きだから・・だから応援するね」

すっと伸びてくる白い腕。
溢れだす涙を拭う指。

今はこれで良い。
でもいずれ・・このすべてをあたしが貰うから。
ルリから奪ってみせる。


■□■□


ゆうのマンションを見つけたのは日が落ちて辺りが薄暗くなった頃だった。

はぁ~・・・
方向音痴にも程がある!
一体何時間、彷徨ったんだろう・・・

見覚えがあるエントランスに入ると、オートロックのところでゆうの部屋番を押した。

ピンポーン・・ピンポーン・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・

あれ?
居ないのかなぁ?
家に居ると思ったけど、誰かと会ってるのかな?

諦めようかと思ったその時、エレベーターから人が降りてきたのが見えた。

嘘・・・
どうして・・・奈々!?

心配で心配で早く会いたいと願ったゆう、
そしてその隣に彼を気遣うように寄り添った奈々が、そこに居た。

どういうこと・・・!?



    

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2010.02.26 / Top↑
「先生・・あたし、先生のことが・・」

川瀬は俺に抱きつくと、瞳を潤ませた。
ぐっと胸を押しつけるようにして、下から見上げてくる。

・・・ははっ。
これで、たいていの男は手に入るってわけだな。

「川瀬、離れろ」
「どうして?あたしのせいで奥さんを誤解させたから?でもね、先生、誤解じゃないよ、だってあたし、先生のこと好きだもん」

・・・何がしたい?

顔を紅潮させて俺の胸をぎゅっと掴むその仕草。
本気で言ってるのか・・それとも演技?



■□■□


事の始まりは、3日前のこと。
ルリと夜景を見にドライブした少し前、妻、由美から電話がかかってきた。
内容は、今後2人のことを話し合いたいと。

俺達夫婦は元々、親が決めた結婚で2人とも乗り気ではなかった。
そんな始まり方で上手くいくはずがない。
結局、お互いに向き合わないまま、時間だけが流れた。

単なる同居人。
そんな関係が窮屈で、家を出て一人暮らしを始めたのが半年前。
もう、とっくに夫婦関係は終わっていると思っていたのに・・・

ルリを自宅前まで送り届けてから、由美と待ち合わせしたファミレスへ向かった。
冷静に・・・ただ今後のことを話し合うつもりだったのに。

「良く考えたけど、今回の結婚はお互い早すぎたんだと思う。俺ら・・形だけは夫婦だったけど、お互いのこと何も知らないじゃないかな」

口火を切ったのは俺の方。
妻も神妙な顔つきで、こちらを見つめている。

「確かにそうね・・・だけど、私、あなたを愛してたわ」
「・・・由美・・」
「この結婚は親が決めたこと。けれど、あなたに初めて会ったその瞬間に恋に落ちたわ。お父様に反抗してばかりの頃だから、あなたを好きだと認めるという事は、お父様に負けた気がして素直に言えなかったけど・・・でも、こんなことなら初めから言っておけば良かった。私は、悠介さんを愛してるわ」

結婚して初めて聞く彼女の本音だった。
お嬢様で、負けん気が強くて、自由奔放。
その反面、脆く繊細なところもあった。

いや、だけど。
俺の知ってる事実と違う・・。
それに、もう遅い。
俺には・・・・

その時、
人影かこちらに近づいたかと思うと、キーの高い声で名前を呼ばれた。

「先生っ!」
「・・・川瀬?」
「こんなところにいたんだぁ~~!探したよぉ~~」
「はぁ?」
「は、じゃないよ~~、ルリが先生のこと探しててぇ~、あたしたちまで一緒に探してって、超迷惑。早く行ってあげてよ~」
「??、どうかしたのか?」
「どうか・・って??今日、デートじゃなかったの?ルリったら、気合い入れまくりで化粧してたよ~先生はいつも大人な店に連れてってくれるからお洒落しないと、ってさ。ん、もう、ラブラブだね♪」

・・・何、訳の分からない事を言って・・・??

川瀬の顔を見つめたまま、呆気にとれてる俺を正気に戻したのは、テーブルを叩く大きな音だった。

「どういうこと!?」
「いや、ちょっと、待て・・」
「いくら私達が上手くいってなかったとしても、まだ夫婦なのよ?浮気するなんて・・ましてや、女子高生とだなんて・・」

由美の顔は怒りで紅潮していく・・。
眉を吊り上げ、大きく目を見開くと、グラスをこちらに投げつけた。

ガッシャ―――ン

「この事は、実家に報告させて頂きます」

由美はそれだけ言い残すと、席をたった。

物面白そうに向けられる視線と、ヒソヒソ声。
割れたグラスで切った左手。
おろおろとハンカチをカバンから取り出す川瀬。

事の状況を把握するのに、暫く時間がかかった。



    



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2010.02.26 / Top↑
ゆうの住んでるマンションまでの道順は、うる覚えだった。
それでもあたしは無我夢中で走った。

彼に何かあったなら、あたしが傍にいないと。
そんな根拠のない使命感に燃えていた。

はぁ・・はぁ・・・

確かこの辺りのマンションだったはず・・なんだけど。
この前来た時は夕方で暗かったから、昼間の今とは風景が違って見える。

ゆう・・待っててね?
今から行くから。

はやる気持ちを抑えながら、ゆうの住むマンションを探した。




■□■□



ピンポ――ン・・


本日、何杯目かの珈琲と鎮痛剤を喉に流し込んだところで、
来客者を知らせるインターフォンが鳴った。

――こんな時間に誰だ・・・?
まさか、由美?

いや、まさかな。
あれはプライドが高い女だ。
自分からのこのこ現れるような事はしないだろう。

昔はあれでも、可愛かったが・・・

ふと、出会った頃の由美とルリの姿が重なった。
猫のようにプライドが高く、自由奔放、それでいて甘えた。

ふっ、どうかしてる。
由美とルリが重なって見えるなんて。
由美・・妻はもう、可愛い猫ではない。
化けの皮を剥いだ雌豹と言ったところだな。


ピンポ―――ン・・・ピンポ―――ン


「ったく、誰だよ、しつこいな」

インターフォンのところへ行き、モニターを覗きこむ。
そこには高校の制服を着た一人の女子高生が立っていた。

・・・・!?

その姿に驚きながらも、インターフォン越しに話かけた。

「・・・どうして、ここに?」
「あ~、やっぱりいたんだ~、ねぇ、このオートロック解除して♪」
「ああ・・・」


■□■□


「えへへ、来ちゃった^^」

それが彼女の第一声。
走って来たのか、ほんのり汗ばんだ顔を手でパタパタと煽いでいる。

「手、痛そうだね・・大丈夫?」
「いや、平気だ。それより・・・」
「ああっ!やっぱり良い眺めっ!ここに一人で住んでるの?」
「そうだけど、何故分かる?」
「だって~・・生活感がないもん♪それに、女の影がない」

彼女はにっこりと微笑むと、部屋のあちこちを偵察し始めた。

「へぇ・・・キレイにしてるじゃん。以外に几帳面なんだね」
「おい、うろちょろするなよ」
「いいじゃん・・・・」

動き回る彼女の腕を掴み、ソファーの方へ引っ張った。
そこに座るように、と顎で指示するが・・・
そのまま彼女は俺に抱きついてきた。

ふわり、と甘い苺の香りがする。

「・・・ごめんね。あたしのせいで、怪我しちゃったね」

瞳を潤ませ、上目使いで見上げてくる彼女に、
何度目かのため息を落とした。

「川瀬・・・」



  


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2010.02.18 / Top↑
一体、何があったの・・??
いつもの、ゆうじゃない。

だけど、怖くて聞けなかった。
聞きたいけど・・聞いたら壊れてしまうような、そんな気がしたの。


■□■□


ゆうとドライブしたあの晩から、3日後のお昼。
あたしは学校の5階の端にある教室にいた。

ここで、吉森くんと美香と3人でお昼を食べる。
それが日課になりつつあった。

「奈々たちはどう?嫌がらせとかされてない?」

美香が2つめのクリームパンにかぶりつきながら尋ねた。
彼女の食欲はすごい。
小さな体のどこに入るの?ってなくらい、食べる。

「特に何も・・・無視される程度かな?まぁ、こっちから話すこともないし、平気だよ」
「そっかぁ、良かった。でも何かあったら、言ってよ~~」
「うん、ありがと」
「崇じゃ、頼りないからね、いざとなったらあたしが行くよ」
「おい、頼りないって、どういう意味だよ」

隣で聞いていた吉森くんが美香のおでこを小突いた。
2人は幼馴染ってだけあって、仲が良い。

何だか・・羨ましいな。
2人にしか作り出せない空気があって、それはほんのりと温かい。
長い年月をかけて育てた信頼関係なんだろうなぁ、と思う。
意地悪を言いあってても、嫌味がなんだよね。

微笑ましい2人の言い争いを聞きながらも、
あたしはゆうの事を考えていた。

あれから、連絡が取れない・・・――。
電話をかけても繋がらないし、メールの返事もない。

学校でも見かけなくて・・・
もしかしたら、休んでいるのかなぁ?

「そう言えばさ・・・」

一通りの言い争いが落ち着いた美香が、思い出したように話し出す。
それは、今まさに、あたしが想っていた人の話題だった。

「伊吹先生、っているじゃん?崇たちの副担だよね?」
「ああ、あれ、そういや最近、見かけないなぁ・・」

同意を求めるようにあたしの顔を見た吉森くんに相槌を打った。
心臓がバクバク音を立てる。

「噂なんだけどさ、奥さんと揉めてるらしいよ~~んで、奥さんが暴れて、怪我したとかって」
「怪我!?」
「うん、昨日かなぁ?放課後、学校に来てたらしいけど、手に包帯をグルグル巻いていたって~~、なんかやばそうだよね」
「やけに、詳しいな」
「ふふふ、美香ちゃんの情報網はFBI並みよ?」


・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・

ゆうが、怪我!?
奥さんが・・・・

美香がその後、色々話していたけど、続きはまったく頭に入ってこなかった。
勢いよく立ちあがると、椅子が派手にひっくり返る。。。

大きな音を立てて倒れる椅子も、
驚く美香たちの声も、

気にしてる場合じゃない。
あたしは教室を飛び出した。



    




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2010.02.14 / Top↑
グゥゥゥゥゥゥン――――


車体に響くエンジン音。
ギアを握る角ばった手に惚れぼれする。

けど・・・
対向車のヘッドライトで時折、明るく浮き出るゆうの横顔は、とても冷たくて話しかけれなかった。

あたし・・何かした?
悪い事でも言ったかな?
自分の話ばかりして、つまらなかったかな・・・

ゆうは元来クールな人だと思う。
自分自身の事はあまり話さないし、無駄話もあまりしない。
気持ちは、言葉より態度で表すタイプ。

だから、色々話したのに・・・

大人な彼に合わせる話題も浮かばなくて、
女子高生の他愛ない話じゃ、苦痛だよね。
あたしってば、馬鹿だなぁ・・・。

ゆうが運転する車は、あたしの家の傍まで来ていた。
帰りの道中、会話ゼロ。

いくらなんでも、これはまずいでしょ!?

「あ・・・あの、ゆう?」

坂の上に登り切る手前、路側帯がほんの少し広くなっている場所に路上駐車する。
はじめ彼があたしを待っていた場所だ。

ギアをPに入れて、サイドブレーキを引いたゆうがゆっくりとこちらを向いた。
その瞳は・・・うぅ・・まだ冷たい。。。

「き、今日はありがとぅ―――・・・」
「ああ」
「あのさ、・・・えっと・・・何か怒ってる・・??」

まるで "へびに睨まれたカエル” 状態。
彼の切れ長の瞳から送られる眼力はそれくらいの効果がある。

固まったままのあたしに、無言で手を伸ばすと
強引に顎を引いた。

そこから、始まるキス。

優しさは・・・ない。
まるで唇全体を奪い尽くすかのような激しいキスに、あたしは付いていくのが必至だった。

・・なに?なに・・!?
いつものゆうじゃないよ・・・。

呼吸が苦しくて空気を求めるように、唇を離す。
けれど、ゆうの追及は終わらなかった。

「んん・・ゆ・・ぅ・・苦しいよ」

唇がジリジリ痛む。
やっとの思いで声を出すと、ゆうが我に返ったように体を離した。

「・・・ごめん」
「ううん・・・だけど、びっくりした」

いつも大人で、余裕にあたしをからかうゆうが、
今日はやけに幼く見えた。

「ルリ・・ごめんな」


■□■□


何が、ごめん、なの?
どうしてこんな強引なキスをしたの?

頭の中で色んな質問がぐるぐる回っていたけど、
ヒリヒリ痛む唇は、それらを発すること拒んだ。

・・・・なんか、聞いちゃいけない気がして。

あたしはゆうの頬に手を当て、自分からキスをひとつすると彼を抱きしめた。
こうしてないと、何か不安で・・・怖かった。



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2010.02.13 / Top↑
トクン・・・トクン・・・

ゆうの胸に耳を押し当てると、規則正しく心臓の音が聞こえた。

背中に回される逞しい腕、髪を撫ぜてくれる大きな手、
それだけでとても安心する。

"満たされる”

そんなこと今まで感じたことないけど、
きっと、こういう事を言うんだろうと思う。

例え、
世界中が暗闇に覆われたとしても、怖くない。
この腕の中なら、何だって平気。

そんな安心感だった。

・・・なんて、ちょっと大げさかな?

「今日、なんかあったのか?」

ゆうの声は掠れていた。
それがとても色っぽく感じる。

「何でもないよ」
「じゃぁ、どうして午後の授業をさぼった?」
「う~~ん、だるかったから」

あれ?
どうして隠す?
さっきまで聞いてほしくて仕方なかったのに・・・

ゆうと抱き合い幸福感に包まれた事で、
さっきまでの事がどうでも良くなったの。
話を・・・起きた事を説明するよりも、ゆうのキスが欲しい。
もっと、あたしに触れてほしい。

「本当にそれだけか?」
「うん、そうだよ。たまには息抜きしたいじゃん?」
「・・・そうか」
「単位は十分すぎるくらいあるし、絶対出ないといけない授業もなかったし・・・あ~もしかして、説教でもする気?先生らしく」

クスクス・・・
ゆうを茶化すように笑う。
だけど、彼はそれに応じず別の質問をした。

「もう、クラブに行ってないのか?」

あの晩、あそこに、クラブにいたから、ゆうに出会えた。
空白を埋めるように通い続けたクラブ。
居場所を求め続けたホール。
だけどもう、必要ない。

あたしはもう、居場所を見つけたから。

「行ってないよ、もう、行かない」
「そうか・・・」

あたしはそのあと、ペラペラと他愛のない話をゆうにした。
仲良くなった美香の話、優しい吉森くんの話、
可愛くない弟の話や、子供の頃の話。

相槌を打ちながら、煙草に火をつけるゆう。
やがて、彼の瞳がどんどん冷たく影っていくのにあたしは気がつかなかった。

「そろそろ、帰るぞ」


■□■□


あの日は色んな事がありすぎて、注意力がなかったんだ。

自分自身に起こった出来事を言葉にするより、
他愛ない話や、雑談、笑い話。
そんなことを言いながら、ゆうに触れていたかった。

のちに・・・
この事を深く後悔することになる。



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2010.02.10 / Top↑
息が上がるのと同時に心臓が高鳴る・・・
車に駆け寄ると、運転席の窓からゆうの顔を覗きこんだ。

左手を軽くハンドルに置いたまま、目を閉じている・・・長い睫毛。

ずっと眺めていたい・・けど、
右手に持っていた煙草の灰が落ちそうになっていた。

コンコン・・・

窓をノックすると、ゆっくりと瞼を開いたゆうがこちらを向いた。
灰、落ちそうだよ、っと指でジェスチャーすると、
特に慌てる様子もなく、灰皿に煙草を入れた。

ゆうはいつだってポーカーフェイス。
ほくそ笑んだ顔や意地悪な顔、計算された甘い顔は見せてくれるのに、
怒った顔や驚いた顔は見せてくれない。

それが少し、悔しい。

「乗れ」



■□■□


ゆうの車の中は、シナモンの香りがする。
むせるような甘い匂い。

時々、彼から漂う甘い香りはこの匂いだと、
初めて乗った時に気づいた。

「携帯・・・」
「え?」
「どうして電源切ってんだ?」

あ・・・そっか。
そうだった・・・、あの嫌がらせメールのあと、
吉森くんが電源を落としたんだった。

「電話してくれたの?」
「ああ」
「ごめん、ちょっと・・・色々あって・・」

色々・・を、聞いてほしい。
そんな期待を込めて、ゆうの方を見たけれど、
彼は黙ってハンドルを操作してる。

その横顔は、息を飲むほど綺麗で・・・冷たくて、
言葉を続けられなかった。



暫く車を走らせると、徐々に道幅が狭くなり、
山道に入っていった。
急なカーブをいくつも越え、登り続けること数十分。

・・・やばい、眠たくなってきちゃった・・

車に乗るとすぐ寝ちゃうんだよね、あたし。
しかもこの揺れ・・やばい。

「着いたぞ」

ゆうはサイドブレーキを引きながら、こっちを向いた。
あたしが車に乗り込んでから、初めて顔を向けてくれたような気がする。

嬉しくて思わず顔がにやけてきちゃう。
それがばれないように、そっけない素振りで尋ねた。

「ここ・・・どこ?」
「見てみろ」



わぁ・・・―――――


フロントガラスの向こうに輝くのは、
濃紺の海に宝石を散りばめたような夜景

幻想的とも言える夜の海に、あたしは瞬きすら忘れ
美しい景色を眺めた。

やがて、
時が止まったような車内、ゆうとあたしの体温が重なった。



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2010.02.07 / Top↑
駅前で美香と別れたあと、あたしはバスに乗りこむ。
時刻は6時前、辺りは薄暗くなっていた。

・・・学校、サボっちゃった・・・

ククク、と笑いがこみ上げる。
学校だけはちゃんと行かないと、勉強だけはちゃんとしないと、
そう思ってたあたしは、クラブ通いしたって授業はちゃんと受けていた。

どうでもいいや。

うわべだけ取り繕って傷の舐めあいをする友達も、
周りの目ばかり気にして嘘を塗り固める母親も、
そんな母を見て見ぬふりをする父親も、

ぜぇ~んぶ、いらない。

ちゃんとあたしを見ててくれる、吉森くんや、
心配してくれる美香。

それに、ゆうが居れば・・・・


ゆう・・・逢いたいなぁ・・・

今日は、ゆうの姿を見ていない。
朝のホームルームにも来なかったし、数学の授業もなかった。
廊下ですれ違うこともなかった。

会いたくない時は、出会ってしまうもの。
会いたいときには、会えないもの。

どこかで聞いたことある、法則だ。



―――次、旭川町・・旭川町、止まります・・・・


バスがバス停に停車する。
通いなれた通学路。
ここで降りたら、あとは嫌悪感漂う我が家に帰るだけ。

どうしよう、このまま乗っていようかな?
それか、ゆうの家に行っちゃおっかな?

・・・なんて、結局出来るはずもなく、あたしはバスを降りた。

バス停からは、徒歩10分。
住宅街の中を、とぼとぼ進んでいく。
とぼとぼ・・って言うのは、気持ちが重いってのもあるけど、
坂がキツイの!
バス通りの大きな道から延びる上り坂を、上りきった所に我が家はある。

ったく、なんでこんな不便なところに家を買ったのだろう?
お陰で足が逞しくなっちゃうじゃない。
それに夜は道が暗くて怖いし。

・・・別に、あたしの為に家を買ったわけじゃないから、仕方ないけどね。。。

ここら辺は閑静な住宅街で、大きな道が通ってるわけでもないので車通りも少ない。
そのため、路上に止めてある車は非常に目立つ。

坂を登りきる手前に止まってる、青いフェアレディZ。
・・・目立ちすぎるよ、ゆう。

運転席の窓から、ゆっくりと燻らせる煙草の煙。
上り坂のキツさなど忘れ、全速力で彼の元へ走った。



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2010.02.07 / Top↑
「午後の授業、出たくないなぁ・・・・」

なんとなくね、なんとなく。
ここでサボるのは負けるような気がして嫌だけど、
この楽しい時間が、もう少し続いてくれたらなぁ~

そんな気持ちが、思わず口から零れていた。

「んじゃぁ~、一緒にサボろっか?」

あっけらかんと答える美香。
自分で言い出した事だけど、その答えにぽかん、としちゃった。
だって、一応、受験生だし。

「うん♪行きたくない時はサボるにかぎる。どっか遊びに行こうよ~」
「・・・いいの?」
「いこいこ♪♪♪」

その場で、ぴょんぴょん跳ねながらはしゃぐ美香。
ホント、可愛いなぁ。。。

「じゃあ、俺も、一緒に行こっかな?」
「吉森くんも!?」
「崇は駄目ー!」

さっきまで嬉しそうに跳ねていた美香が、突如眉間に皺を寄せた。

「なんでだよ?」
「ここからはガールズトークなの!それに崇には敵を監視するという役目があるんだから、教室に戻りなさい」

有無を言わせない言葉。
ビシッと突き出された指に、吉森くんは返す言葉もなく苦笑いをした。

「分かればよろしい、そちは任務を実行せよ」

美香が笑って言う。
その言い方がおかしくて、あたしたちは声をあげて笑った。



■□■□


美香と授業をさぼって向かったのは、ファミレス。
お昼の2時前という事で、ひと波去ったのか、店内は空いていた。

メニューを広げた美香が満面の笑みで叫ぶ。

「うわぁ~~この、チョコレートパフェ美味しそう♪」
「・・・まだ、食べるの?」

ついさっき、大きなお弁当を2つ完食したばかりだというのに。

「デザートは別腹なの~、ルリは?ドリンクバーだけでいいの?」
「うん、甘いの苦手だし」
「うっわ、女の敵!」


※※※※※※※※※※※※※


美香とのガールズトークは3時間に及んだ。
さっき知り合ったばかりなのに不思議と会話が進み、
気がつくと彼女のペース。

奈々の話から始まり、恋愛のこと、受験のこと、
親の愚痴や塾の話。

話題は尽きなかった。

「美香、今日はありがとう」
「なぁ~に言ってんのよ、友達じゃん?」

・・・友達、その言葉が胸にずしっと乗りかかる。
無理に作った笑顔は引き攣っていたに違いない。

「今のルリには重荷な言葉だね、ごめん。じゃぁ・・・知り合い・・でも良いからさ、困ったら連絡してね?それから携帯のアドレスは変えて、電話帳以外の番号は着拒否にする事。うっとしい人は全部消去しなよ~」
「うん、分かった。ありがとう。後でメルアド教えるね」
「OK♪」


奈々という親友を失って、美香という友達を得た。
それはあたしにとって、にがく苦しい道を辿る第一歩だった。

だけど、あたしは美香の友達になれて良かった。
心から言えるよ?


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2010.02.03 / Top↑
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